Happy New Year!!
NY 通信、最新号が届きました!
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BEIGO Watch : New Year Special 2023 米語 Watch : New Year Special 2023 皆さま、 新年おめでとうございます。2023年が良い年でありますように。 元旦そして今日と、お昼の温度は10度Cを超え、マンハッタンの北の郊外、ウェストチェスターは穏やかな天気に恵まれました 「週刊NY生活」紙・新年号に掲載した「米語Watchで振り返る2022年」をお送りいたします。 近況や楽しいメッセージをお寄せください。お待ちしています。 (日本在住の皆さまへのお知らせ) 日本時間1月5日(木)、NHKのラジオ・ニュース番組 「マイあさ!」で、ニューヨークから、米語Watchをベースとするお話をします。 朝8時6分ごろからの「ワールドアイ」コーナー にて、田中孝宜 キャスターとの対談です。ご興味があればお聞きください。
米語Watchで振り返る2022年 新年を迎え、コラムで取り上げた言葉(太字で示す)で2022年を振り返ります。 11月に行われた中間選挙、その余韻はまだ収まりません。選挙前は、Red Wave(赤い波、つまり野党共和党の大勝利)が来ると大方は予想しましたが、蓋を開けると与党民主党が大善戦し、Red Ripple(赤いさざなみ)程度になってしまいました。上院は民主党が死守。下院は接戦で共和党が多数を取りましたが 、中間選挙において政権与党が大きく負けると言う過去の慣例から見ると、民主党は頑張ったのです。 民主党が善戦した原因として、妊娠中絶を憲法上の女性の権利だと認定した50年前のRoe対Wade判例を、最高裁判所が覆す決定をしたからだという指摘があります。Pro-choice/Pro-life (人工中絶容認派・反対派)の対立の中、共和党トランプ政権が保守派判事3人を送り込んだ最高裁におけるこの判決が、中絶選択の権利を擁護しようとする民主党への投票につながったのです。 また、2021年1月の連邦議会襲撃をトランプ氏が扇動したSeditious Conspiracy (暴動扇動共謀罪)とし、また襲撃を停止しなかったことは大統領としてのDereliction of Duty(職務放棄)として、民主党サイドは対立軸を明示しました。また、Ultra-MAGA Republican(超MAGA共和党員)が証拠もなく主張し続ける、トランプ氏が大統領選に勝ったと言うBig Lie(大嘘)は、多くの国民にとって受け入れ難かったでしょう。 その意味において中間選挙は、アメリカ国民の民主主義への確固たる信念を、内外に示したものと言えるでしょう。 アメリカにおける社会問題は、今年も大きく報道されました。銃による大量殺人事件は毎週のように起きました。その中でニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットで、若い白人が黒人14名を射殺した銃撃事件には、White Supremacism(白人至上主義)に基づく危険な発想を感じます。その根底にGreat Replacement Theory(大「置き換え」論)があるのかも知れません。これは白人層がユダヤ系、イスラム教徒そして有色人種にReplace (置き換え)され、 伝統的なキリスト教的白人中心文化が危うくなるという差別的な過激思想です。 バイデン政権は銃規制のための努力をしましたが、共和党の大きな抵抗を崩すことはできませんでした。その中で、昨年唯一の成果となったのが、Red Flag Law(銃器没収法)でした。これはテキサス州ユバルディで19人の子供が学校で射殺された事件を受けて、連邦法として成立しました。特定の銃所有者が第三者または本人自身に危害を及ぼす可能性があると家族や警察当局などが判断した場合、裁判所が銃を一時的に没収することを認める法律です。しかし、実効性は限定的なため、11月に コロラド州で起きたLGBTQ(性的少数派)のクラブでの銃撃事件の後、バイデン大統領は改めて、Assault Weapon(攻撃用武器) 禁止を提唱しましたが、共和党の反応は冷たいままです。 麻薬問題も大きく取り上げられました。中でもFentanyl Overdose(フェンタニル過剰摂取)を中心とする麻薬の害悪で年間10万人以上が亡くなったことが判明しました。これは銃や交通事故で亡くなる人々の数よりもずっと多いのです。メキシコのカルテルが密輸するフェンタニルによって、何万人もの人々が死ぬと言う事実は、日本からは想像もできない驚くべきものです。 2022年、アメリカのインフレ率は一時8%を越え、ガソリンや食品を中心に大きな衝撃を家計に与えました。 値上げがウクライナ情勢やサプライチェーンの問題が原因で生じたことは事実ですが、実際にガソリン大手や食品会社が記録的な利益を上げていることから、業者が事態に便乗して Price Gouging(不当な高値で売りつける)をしたと識者は指摘します。ニューヨーク州は、健康や安全に関わる必需品を不当に値上げすることを禁止しており、州のAttorney General(司法長官)は、今後も目を光らせていくでしょう。 パンデミックにより、アメリカの職場は大きな変化を遂げています。リモート勤務が広がり、働く人々がワーク・ライフ・バランスをますます真剣に考えるようになりました。その1つの風潮としてQuiet Quitting(辞めるのではなく、頑張らない働き方)が多くの職場で広がっていると言われます。これは自分が貰っている給料以上には頑張らず、人生をエンジョイしようと言う考え方です。前年には、コロナ禍で新しい機会を求めて職を去る若者のGreat Resignation(大辞職現象)が話題になりました。アメリカの雇用主は 、職場で広がる従業員の新しい人生観・労働観に対応しなくてはなりません。 LGBTQ(性的少数者)に関する議論も盛んに行われました。その中でも、若い人々の間でPreferred Gender Pronoun(PGP・希望するジェンダー代名詞)の使用が人間関係の一部となっていること、また、パスポートにおいても男女の区別をしたくない人はXの印を使えるようになったことは、アメリカ社会全体が性的少数派を積極的に受け入れている事実を示しています。そして、年末には超党派の合意のもと、同性者間の結婚を保護する法律が成立したのは特記すべきことです。ただ、Transgender Sports Ban(トランスジェンダー選手の出場禁止)が大きな論議となり、性転換者のスポーツ参戦には、一般の女性選手との公平なバランスを考慮すべきという視点を示しました。アメリカ人との付き合いにおいて、LGBTQやPGPへの理解は必須になったと感じます。 2022年、アメリカはワクチンの普及もあり、コロナの問題を乗り越えて、社会は正常化しつつあるように見えます。しかし、外交においては、ウクライナ問題、中国との競合、北朝鮮問題など、そして国内では予算案、インフレ、移民受け入れ、環境、銃や麻薬対策、その他の問題が山積しています。バイデン大統領が、自身の標榜する超党派のアプローチで分断を抑え、政策を実行することを期待して、2023年の展開を注視していきましょう。 (旦 英夫 ニューヨーク州弁護士 )